当初、売上不足が業績不振の原因と考えていました。実際は、そればかりではなく、製造過程でのロスが多大であることに気づきました。その分析と対策に多くの時間を費やしました。

製造トラブル

 2014年8月に急減産と大きな製造トラブルがあり、2014年度上半期、赤字になりそうでしたが、何とか黒字にしました。悪い話は早く私の耳に入れるようにと山谷課長を激しく叱責しました。利益にこだわる姿勢が欠如していました。

修繕費の使用

 トラブル続きで初年度の損害は3000万円に迫る金額でした。MPS(原価低減活動)に訪れた岸田常務より、「道南食品は原価低減よりトラブル防止を行なった方が経済効果が高いのでは」と言われて、H製造部長はガックリと肩を落としていました。原因は修繕費の投入不足と包装管理グループの能力不足と断定しました。T部長に確認したところ、収支が悪いので修繕費を止めるように指示があったとのことでした。前職の経験から修繕、予防保全措置を怠ると、のちに大きな損害を被ることは明白であったので、直ちに修繕費を止めないことを宣言しました。

 またMPSで製造、包装それぞれの成果は出ても全体としては改善が見えません。理由を探っていくと、製造と包装の能力ギャップがあり、包装が製造に追いつかないことがわかりました。よって仕掛かり品の山になり、間接費が嵩んでいることがわかりました。包装管理グループは8人もいながら能力不足でした。そこで包装管理グループ長をH製造部長兼務とし、明治本社からH顧問の指導を仰ぐことにしました。

トラブル管理

 生産トラブルがあれば製造部長を通して社長に報告する仕組みでした。かなり遅れて報告書が提出されます。これでは、経営判断が遅くなり十分な対応ができませんでした。そこでデータベースソフト「キントン」に簡単なアプリを作り、発生即時に顛末と被害予想金額を記載する仕組みにしました。これによりトラブルの大きさと対策を早急に知ることができるようになりました。また事後の検証も容易になりました。

開発トラブル

 10月、営業のS部長と開発のHさんの尽力で大型OEMも受注でき、売上は拡大基調になりました。アルコールを配合したチョコレートのOEM品は水分による白化問題で苦労しました。またモールドの設計ミスでチョコレートに剥離痕が出たり、掃除不足で黒点が多発したりで、多数の検品要員が必要になりました。包材の材質の問題で外装に傷が多発、大いに悩みました。わかったことは、初期に問題を発見しないと大損害を被るということでした。また検品の要員を増やせば発見を増やせるものではないことも痛感しました。対応策として配合の変更、製造ラインの大掃除、型の破棄・交換をしました。苦い教訓となりました。

夜中の見回り

 夜中の仕事は気楽でいいと、何人ものパートさんから聞きました。よく調べてみると管理職は夜間勤務をしないことになっていました。夜中の出来高は昼よりも悪く、ライン停止が多発していることがわかりました。夜中のトラブルで管理職に電話をしても連絡がつかないとの苦情も聞きました。そこで、私自身で、突然、2014年10月、夜中に工場巡回を敢行しました。実際は普通に仕事をしていたので安心しました。しかし、現場のリーダー達が夜中の現場を何年にもわたって見ていないというのは問題だと考え、全管理職に交代で夜回りをするよう指示しました。日時を決めず、突然行くように指示しました。20週続けました。現在は行っていませんが、時折は実施した方がよいと思います。

官能検査実施

 2014年度末の生産系会議で中村専務の訓示「階段の昇り降りに手すりを掴んでいるか、できた製品を食べているか、やっているという人は手を挙げなさい」と。私は手を挙げませんでした。「工場長や社長になって若い頃の苦労を忘れ、現場を気にしなくなる、偉くなっても率先垂範しなさい」との訓示でした。衝撃を受けました。早速、手すりを掴まることと毎日の官能検査を実行することにしました。

出来高管理

 月末になってはじめて当月の出来高がわかるのでは改善が遅れることに気づきました。日々の生産が標準を超えているのか下回っているのかをリアルタイムに知りたいと思い、「見える化」を始めました。データベースソフト「キントン」に簡単なアプリを作成し、2015年7月に開始しました(後にサイボウズに移管)。現場の人間が当日の出来高を知らないのでは頑張りようがないとも思い、午前中の出来高を昼食時に確認できるようボードに記入してもらうことにしました。キントンから前日の生産計画と出来高が簡単に閲覧できるようになりました。生産トラブルがあれば、すぐにわかるようになりました。

昼業の開始

 2015年8月より昼休みの一斉生産停止をやめて製造を連続させることにしました。それまでパートさんはフルタイムが原則でしたが、以後、短時間パートを導入し(15.10~)生産効率を上げることに成功しました。

好転

 2015年の8月頃に急に出来高が良くなってきました。次に大きな生産トラブルが減りはじめました。昼食時に生産停止を行わないシフト(昼業)に変えたことも効率化に繋がりました。さらに、2015年10月、明治品以外で単月一億円を越える快挙を成し遂げました。ようやく利益が出やすい体質になりはじめました。ご指摘の件数は、2014年度の2.5ppmから2016年度は0.63ppmまで激減しました。